大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(う)3243号 判決

被告人 橋本大海

〔抄 録〕

原判決挙示の証拠によれば被告人等が共謀して原判示恐喝未遂の犯行に及んだ事実を肯認するに十分である。所論は被告人等は小柳きよみに依頼され同人が木下清に対し有する金二千円の慰籍料債権取立のために右木下方に到りその支払を求めたところ、同人が支払を拒んだために被告人等が脅迫じみた行動に出たものであるからこの所為が脅迫罪を構成することはあつても財産犯たる恐喝罪を構成するものでないと主張するのであるが、凡そ他人に対して権利を有する者が、その権利を実行することは、その権利の範囲内であり、且つ、その実行方法が社会通念上一般に認容すべきものと認められる程度を超えないかぎり、何ら違法の問題を生じないけれども、右の範囲程度を逸脱するときは違法となり恐喝罪の成立することがあるものと解するのを相当とすること最高裁判所の判例の示すところである。(昭和三十年十月十四日第二小法廷判決、判例集第九巻第十一号二一七四頁参照)原判示によれば、被告人等は、前記のように木下清方において同人に対し前記小柳きよみのため慰籍料を請求するに当り、「親爺話はわかつていると思うが、今日は小柳に渡す二千円の金を受け取りに来たんだ。話がわからなければ今から徹底的にやつつけてやるぞ」と怒鳴りつけ、卓上の茶碗を振り上げて同人に投げつけるような態度を示し、更に「親爺わからないなら外に出ろ」と言つて同人を附近の薬師寺の境内に連行した上同所において、「どうしても話がわかんねいなら、ここで喧嘩をやつぺい。親爺が勝てば、あの二千円はいらない。その代り俺が勝てば直ぐ金を出せ」と申し向け、同人の身体に危害を加えるような気勢を示して同人を畏怖させたのであるから、被告人等のこの所為は既に右木下において債務者として社会通念上認容しなければならない程度及び範囲を超え、たとえ、その所為が当初においては債権者としての権利の実行としてであつたとしても、既にその過程においてその実行は濫用に変化し違法なものとなり恐喝の実行の手段として相手方木下をして畏怖の念を生ぜしめる害悪の通知があつたものといわなければならない。然らば証拠により原判示恐喝未遂の事実を認定した原判決は洵に正当であつて、所論は結局独自の見解の下に正当な原判決の事実認定及び法律の適用を攻撃するに過ぎないからもとよりこれを採用するに由なきところである。それ故論旨は理由がない。

(大塚 渡辺辰 江碕)

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